专利摘要:
ナノ粒子を生産するための方法は、水溶性のポリアニオン系ポリマーの存在下で銀シードを調製する工程、及び該銀シードを成長させてナノ粒子を形成する工程を含む。該ポリアニオン系ポリマーは、ポリ(ナトリウムスチレンスルホネート)であっても良い。
公开号:JP2011508072A
申请号:JP2010539040
申请日:2008-12-22
公开日:2011-03-10
发明作者:アハーン,ダミアン・ジョン;ケリー,ジョン・モファット;レドウィズ,ディアドリー・マリー
申请人:ザ・プロヴォスト,フェローズ・アンド・スカラーズ・オブ・ザ・カレッジ・オブ・ザ・ホーリー・アンド・アンディヴァイデッド・トリニティー・オブ・クイーン・エリザベス,ニア・ダブリン;
IPC主号:B22F9-24
专利说明:

[0001] この発明は、ナノ粒子を調製するためのプロセスに関する。特に、本発明は銀ナノ粒子を調製するための改善されたプロセスに関する。]
背景技術

[0002] 銀ナノ粒子は、潜在的に大きな商業的重要性がある。かかる粒子が潜在的な用途を有する領域のいくつかの例としては、バイオアレイ、アンチバクテリアコーティング、表面増感ラマン及び蛍光分光法が挙げられる。しかしながら、かかる用途は、良く定まったサイズを有する単分散ナノ粒子を生産するための適切なプロセスの能力が原因で妨げられている。]
[0003] X.Zou及びS.Dongは、J.Phys.Chem.B 2006、110、21545において、銀ナノ粒子を生産するための方法であって、銀イオンと銀シードの比を制御することによって銀ナノ粒子(ナノプレート)のサイズを調整しうる方法を記載している。大きな比を用いた場合には、より大きなナノプレートを得ることができる。]
[0004] しかしながら、Zou及びDongのプロセスにおいては、銀シードの溶液(クエン酸塩の存在下でAgNO3の標準的なホウ化水素還元によって調製する)を、使用する前に室温で少なくとも24時間熟成させなければならない。Zou及びDongのプロセスを用いて生産された粒子の主な形態としては、切頂三角形、六角形、及び円様の形状が挙げられる。生産された粒子のおよそ10%は、多分散のナノスフィアである。]
[0005] それ故に、銀ナノ粒子を調製するための改善されたプロセスが必要とされている。]
先行技術

[0006] X.Zou及びS.Dong、J.Phys.Chem.B 2006、110、21545]
[0007] 本発明は、
水溶性ポリアニオン系ポリマーの存在下で銀シードを調製する工程;及び
該銀シードを成長させてナノ粒子を形成する工程
を含む、ナノ粒子を生産するためのプロセスを提供する。]
[0008] ポリアニオン系ポリマーは、スルホン化されたポリマー、例えばポリ(スチレンスルホネート)の誘導体であっても良い。該誘導体は、ポリ(スチレンスルホネート)の無機塩であっても良い。該誘導体は、ポリ(スチレンスルホネート)の1価の塩であっても良い。]
[0009] 該ポリマーは、ポリ(ナトリウムスチレンスルホネート)(PSSS)、例えば、約1000KDaの分子量を有するPSSSなどの、約3KDa〜約1000KDaの間の分子量を有するPSSSであっても良い。ポリ(スチレンスルホネート)のその他の溶解性の塩、例えばカリウムの塩もまた用いることが出来る。]
[0010] 該ポリマーは、ポリ(スチレンスルホネート−コ−マレイン酸)及びその誘導体、特にその1価の無機塩、具体的にはポリ(ナトリウムスチレンスルホネート−コ−マレイン酸)などの、置換されたスチレンスルホネートのコポリマーであっても良い。]
[0011] 該ポリマーは、アネトールスルホネートの誘導体、特にポリ(ナトリウムアネトールスルホネート)であっても良い。
該ポリマーは、ポリ(ビニルスルフェート)の誘導体、特にポリ(カリウムビニルスルフェート)であっても良い。]
[0012] 該ポリマーは、ポリビニルスルホネートの誘導体、特にポリ(ナトリウムビニルスルホネート)であっても良い。
該ポリアニオン系ポリマーは、カルボキシル化されたポリマー、特にポリ(ナトリウムアクリレート)であっても良い。]
[0013] 該ポリマーは、銀シードの調製において、約0.2mg/l〜約2g/lの濃度で存在しても良い。例えば、銀シードの調製におけるポリマーの濃度は、約12.5mg/lであっても良い。]
[0014] 銀シードを調製する工程は、室温で実行しても良い。
銀シードを成長させる工程は、室温で実行しても良い。
本明細書中に記載したプロセスによって形成するナノ粒子の約95%は、ナノプリズムであっても良い。]
[0015] 本発明は、添付の図面を参照して、例示の目的でのみ与えられた本発明の実施態様に関する以下の記載から、より明確に理解されるであろう。
全てのTEM像は、JEOL JEM−2100LAB6を用いて撮影した。]
図面の簡単な説明

[0016] 図1Aは、典型的なサンプルからの平らに横たわった複数の銀ナノプリズムのTEM像である。Bは、同じ手順により作成された別のサンプルからの複数の銀ナノプリズムのTEM像であり、各銀ナノプリズムは、それらの端部で垂直に立つように互いに積み重ねられて方向付けられている。Cは、Aに示したナノプリズムのサンプルのUV−Visスペクトルであり、〜825nmで主SPR(面内双極子)を示している。
図2Aは、PSSSの存在下で生産されたシードから成長させた平らに横たわった複数の銀ナノプリズムのサンプルからのTEM像である。B及びCは、PSSSが存在しない状況で生産されたシードから成長させた複数の銀ナノ粒子のTEM像である。該サンプルは、幅広い範囲のサイズのナノプリズム、及び5回対称性の存在する様々なサイズの「球状」粒子を含む。Cにおいては、「ナノテープ」もまた見ることが出来る。Dは、PSSSの存在下で生産されたシードから成長させた、AにおけるナノプリズムのUV−Visスペクトル(Aとラベルされている)、及び、PSSSがない状態で生産されたシードから成長させた、B及びCにおけるナノ粒子のUV−Visスペクトル(Bとラベルされている)である。
図3Aは、ナノプリズムの4サンプル(1〜4)のUV−Visスペクトルである。Bは、Aの4サンプルの各々からの銀ナノプリズムに関するサイズデータのプロットである。Cは、Aの4サンプルについて、厚み(T)で割った端部長さ(Z)に対して主SPR(面内双極子)の位置に関するデータ(四角)をプロットしたものである。破線は、データの線形近似である。端部長さ及び厚みは、垂直に方向付けられたナノプリズムの寸法を測定することによって得られた。全てのサンプルの平均厚み(T)は、およそ5.5nmである。エラーバーは、ナノプリズムの端部長さ及び厚みの測定の標準偏差のために生ずる、L/Tにおける不確実性を示している。
図4Aは、得られた色の範囲を説明する一連のサンプル(1〜10)の写真である。サンプル10における紫色は、主に面内4重極子による吸光の結果である。Bは、異なった体積のシード溶液:1)650μl;2)500μl;3)400μl;4)260μl;5)200μl;6)120μl;7)90μl;8)60μl;9)40μl;10)20μl;を用いて得られた予め調製された一連のサンプルの規格化スペクトルである。Cは、エネルギーに対してプロットされたBからのスペクトルである。
図5Aは、ナノプリズムサンプル(1〜10)の各々に関して、プラズモン共鳴エネルギーに対してプロットされたSPRのFWHMを示すグラフである。Bは、ナノプリズムサンプル(1〜10)の各々に関して、ナノプリズムの体積に対してプロットされたSPRのFWHMを示すグラフである。端部長さに関する19%の標準偏差(表2におけるデータに基づく)、及び厚みに関する1nmの不確実性を用いて、ナノプリズムの体積に関するエラーバーを生成した。
図6は、平らに横たわったナノプリズムのTEM像である。左下における拡大図は、格子縞の間の2.5Åの間隔を明らかに示している。右下の差込図は、全体像のフーリエ変換である。
図7は、<111>に沿った固有の積層欠陥、すなわち、fcc結晶のABC層({111}面)の連続的な積層中の欠陥が、どのようにhcp領域を生ずるかを説明する概略図である。黒い点は{110}面における原子を表し、一方、灰色の点はそのすぐ後方の原子を表す。
図8Aは、垂直に方向付けられた銀ナノプリズムの積層のTEM像である。Bは、Aの右手側のナノプリズムの高解像度像であり、欠陥構造を示している。このナノプリズムは、{110}面が像の面であるように、すなわち、電子ビームが<110>に沿うように方向付けられている。Cは、Bにおけるナノプリズムの内部構造の分析を示している。一連の固有の積層欠陥は、結果として六方最密充填パターンの発生をもたらし、そして、2.50Åの間隔で表面に垂直に整列した原子の配列を生ずる。2.35Åの正確な間隔は、{111}面に関して、及びhcp領域の交互のABAB・・・層に関しても得られた。
図9は、銀ナノプリズムに関するX線回折データを示すグラフであり、銀のfccに対応するピークは*及び関連するミラー指数でラベルされている。2つの追加のピーク(xでラベルされている)は、銀ナノ粒子における銀原子の欠陥誘起hcp配列に関するリファレンス57のサポート情報セクションに報告されている理論回折図から予測される位置に対応する。
図10Aは、fcc結晶の<110>に方向付けられた部分を説明する概略図である。このように切り取られた結晶の端部は、{100}及び{111}面の交互の組を有する。Bは、fcc単結晶(双晶面又は欠陥がない)から構成されるナノプレートの概略図である。単結晶は通常はこの構造を取らないが、この概略図は、fcc結晶から切り取られたナノプレートが{100}及び{111}面の交互の組からなる端部を有する可能性があることを説明している。Cは、不均等な厚みの2つのfcc層の間に挟まれた欠陥誘起hcp層を有するナノプレートの概略図である。このhcp層は、側面の成長を決定する。二次元成長面の内部では、結晶面の非対称な分布のために、一定の方向が選択される。ブロック矢印により、ナノプリズムの良く知られた三角形を導く、選択的成長の提案されている方向を示した。
図11は、サンプル1〜4に関する、横向きに置かれ、積層した銀ナノプリズムのTEM像を示している。図3Aにおいて示すように、主SPRのスペクトル位置とともにナノプリズムの端部長さが増加する明らかな傾向が存在する。スケールバーは20nmである。
図12は、図4B(線A)からのサンプル10、及び図3A(線B)からのサンプル4のスペクトルである。面内4重極子SPRは、明らかに〜465nmに肩を持って見られ、これは、暫定的に面内8重極子SPRとして割り当てられる。面外2双極子SPR及び面外4重極子SPRは、それぞれ〜400nm及び〜330nmに確認される。] 図10A 図11 図12 図1A 図2A 図3A 図4A 図4B 図5A 図6
[0017] 我々は、非常に温和な条件の下でナノプリズムの選択的な生産(>95%)を可能にし、かつ高い再現性の程度でそれを可能とする銀ナノ粒子のための合成法を開発した。
本発明は、温和な条件の下で(室温で水を溶媒として)、急速かつ再現可能なやり方で、高収率で銀ナノプリズムを選択的に生産する(>95%)熱合成手順が利用できないという問題を解決する。]
[0018] 我々は、シードの生産工程におけるポリ(ナトリウムスチレンスルホネート)(PSSS)などのポリアニオン系ポリマーの使用が、温和な成長条件を使用した場合に高品質の銀ナノ粒子を保証するという利点を有することを見出した。成長工程におけるポリマー又は全てのその他の成長指向剤が存在しないことは、粒子の将来の機能化のための利点となりうる。]
[0019] 三角のナノ粒子の側面寸法は、成長度合を調節することによって制御することが出来る。これは、反応におけるシードの数を調節することによって制御し、シードの数は、この成長段階において用いられるシード溶液の体積によって決定される。面内双極子プラズモンバンドの位置と、ナノ粒子の寸法との間には、線形関係が存在する。]
[0020] ナノプリズムの最終的なサイズは、成長工程における銀イオンと銀シードの比を制御することによって調整することが出来る。例えば、本明細書中に記載したサンプル1〜10に関しては、以下の比を用いても良い。]
[0021] ]
[0022] 4サンプル(1〜4)の実施例及びTEM分析を、図11に示す。一連の連続的に大きくなるナノプリズムは、この実施例において記載されたプロセスに従って、650μl、300μl、150μl、及び130μlのシード溶液の体積で合成した。] 図11
[0023] 我々は、高品質の銀ナノプリズムを高収率(少なくとも95%)で生産するための、急速かつ容易に再現可能な、シードベースの方法を記載する。ナノプリズムの端部長さ、及び主プラズモン共鳴の位置は、反応条件の調節を通して容易に制御することが出来る。ナノプリズムの溶液のUV−Visスペクトルからは、面内双極子プラズモン共鳴の不均一に広がった線幅が測定され、プラズモン減衰の程度における傾向は、プラズモン共鳴エネルギー及びナノプリズムのサイズの関数として説明された。銀ナノプリズムのラメラ欠陥構造の深さ方向分析により、欠陥が、欠陥の近傍における結晶構造の転移を導きうることを確かめる。これらの欠陥は組み合わさって、1nmより厚く、結晶の至る所に広がるラメラ領域を生ずることがあり、ラメラ領域において銀原子は連続的なhcp構造に配列される。このhcp構造は2.50Åの周期を有し、それ故に、<111>方向に向けられて平らに横たわったナノプリズムにおいて共通して観察される2.50Åの格子縞を説明する。]
[0024] 本明細書中に記載された熱合成手順は、急速かつ再現可能なやり方で、かつ温和な条件の下で(室温で水を溶媒として)、銀ナノプリズムを高収率で選択的に(>95%)生産する。これらのナノプリズムのTEM分析は、欠陥の近傍におけるhcp構造を生ずるだけでなく、組み合わさって約1.5nmの厚みの連続的なhcpラメラ領域を発生させる複数の欠陥をも生ずる、銀原子の欠陥誘起配列の直接の証拠を生み出した。この原子の六方配列は、ナノプリズムの{111}平面と垂直に2.5Åの間隔で伝播し、これにより、図6に示されるような、平らに横たわったナノプリズムにおいて共通して観察される2.5Åの格子縞を説明する。] 図6
[0025] 銀などの貴金属のナノ粒子は、ナノテクノロジーにおいてとても興味深い。これは主に、入射光の一定の周波数に共鳴する伝導電子の集団振動に起因し、表面プラズモン共鳴(SPR)として知られる吸光を導く。共鳴のスペクトル位置は、ナノ粒子のサイズ及び形状に高度に依存し、金属及び周囲溶媒の屈折率にもまた依存する。]
[0026] 高度に成形された金属ナノ粒子の、重要であり、かつ最も興味深い性質の一つは、金属ナノ粒子のSPRで、ナノ粒子の表面近傍の電場強度が、印加電場と比較して強く増幅されているという事実である。この電場増幅の2つの潜在的な用途は、表面増感蛍光発光(SEF)及び表面増感ラマン分光(SERS)である。増幅の程度は、多くの因子に依存する。これらのうちの1つは、形状である。離散双極子近似(DDA)計算により、ナノロッド及びナノプリズムが、スフィアよりもより非常に高い程度の局所電場の増幅を示すことが示された。近年では、電子エネルギー損失分光法(EELS)により、金属ナノロッド及びナノプリズム上のSPRの高解像度探索が可能となっており、光学スペクトル及び計算に一致する結果をもたらした。]
[0027] 電場増幅に影響を及ぼす別の因子は、表面プラズモンの減衰であり、散逸時間T2により特徴付けられる。電場増幅因子|f|は、SPRの散逸時間T2に直接的に比例し(|f|∝T2)、ここでT2=2h(ハミルトニアン)/Γhomであり、Γhomは均一線幅である。プラズモンの減衰は、非放射崩壊(吸収)、又はプラズモンのフォトンへの変換(散乱)のいずれかを通して生じ、放射減衰、すなわちΓhom=Γrad+Γnon−radとして知られる。従って、電場増幅を当てにした用途に関しては、とあるナノ粒子の形態の適性は、個々のナノ粒子の均一線幅の測定から評価することが出来る。例えば、ナノスフィア及びナノロッドを比較する一連の実験は、ナノロッドが、典型的には、スフィアと比較して劇的に減少したプラズモン減衰、すなわちより狭い線幅を見せ、それ故に、より強い電場増幅を生み出すことを示した。低いプラズモン共鳴エネルギーでは、この違いは、ナノロッドがより非常に低い放射減衰を示すという結果となる。これは、ナノロッドが、対応する、同一のプラズモン共鳴エネルギーを有するナノスフィアよりも非常に小さな体積を有し、その放射散逸速度(放射減衰)はナノ粒子の体積に比例する、すなわちΓrad∝Vであるからである。ナノ粒子の形状が異なると、所与のプラズモン共鳴エネルギーに関してナノ粒子の体積が異なるので、ナノ粒子の形状によってプラズモン減衰の程度が高度に影響を受けることは明らかであり、そして、これは、ナノ粒子の形状が局所電場の増幅の程度に影響を与えるための別のルートである。銀の周波数に依存する誘電特性のために、プラズモン共鳴エネルギーが増加すると、プラズモン減衰への非放射の寄与が増加する。]
[0028] 同様に、より近年の実験は、Au−AgナノボックスのSPRに関する線幅が、同程度のプラズモン共鳴エネルギーを有する金ナノロッドの線幅よりも非常に広いことを示した。加えて、MunechikaらのJ.Phys.Chem.C 2007、111、18906は、個々の銀ナノプリズムの拡散スペクトルの線幅を研究し、粒子体積の増加、及びプラズモン共鳴エネルギーの増加の両方に応じて線幅が増加することを見出した。]
[0029] SEF及びSERSなどの潜在的な用途は、最終的なナノ粒子の形態に対する高度な制御を伴う合成手法の開発のための原動力である。銀ナノプリズムは、面内双極子SPRを〜400nmから近赤外(NIR)まで可視スペクトル全体にわたって調整することが出来るので、大いに注目を集めている。銀ナノプリズムの生産のために存在する合成法は、一般的に、2つのカテゴリー、光化学的(プラズモン駆動合成)及び熱のいずれかに判別することが出来る。光化学的合成法は、今までに最も高い品質のサンプルを生産してきたが、この手法は、典型的には、サンプルの調製のために日数を伴う。熱による手法はより速いが、形状及びサイズに範囲を伴うサンプルを生産することがある。]
[0030] 粒子のサイズ及び形状に影響を与える様々な因子を調査する膨大な研究が存在する。近年までは、非等方性溶媒中での異方性成長の存在に関するいくつかの説明は、特にナノロッド及びナノワイヤに関して、界面活性剤分子が集合してテンプレートになり、その形状が、次いで、結晶の成長を決定するということに基づいていた。より一般に考えられていたことは、ポリマー及び界面活性剤などの有機分子の、{100}及び{110}などのより安定でない結晶面への選択吸着が存在するということである。このモデルにおいては、より露出した面に金属原子をより非常に早い速度で添加すると、選択的な成長方向を生ずることになる。例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)の10面体銀ナノ粒子の{100}側面への選択的結合は、{111}端面の成長により、5回対称性を有する銀ナノワイヤをもたらし、そして単結晶銀ナノ粒子の{100}面への結合は、{111}面のより速い成長の結果として銀ナノキューブをもたらす。臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)界面活性剤の10面体金ナノ粒子の{100}側面上の選択吸着は、{111}端面の成長により、5回対称性を有する金ナノワイヤをもたらし、CTAB−Ag+の単結晶金ナノ粒子の{100}及び{110}側面上の選択吸着は、ほとんどの{111}端面の選択成長により、単結晶ナノロッドをもたらす。セチルトリメチルアンモニウムトシラート(CTAT)の10面体銀ナノ粒子の{100}面上の選択吸着は、5回対称性を有する銀ナノロッドをもたらす。加えて、近年のコンピューターによる研究は、界面活性剤の表面選択結合に基づく異方性成長を予測することに成功した。]
[0031] それにもかかわらず、これらの例に関してさえも、有機種の一定の結晶面への選択的結合の結果として生ずる異方性成長が、成長溶媒に露出する結晶面の種類及び方向を決定するシード粒子の元々の双晶又は欠陥構造に依存することは明らかである。大抵の合成法において、粒子の形状に範囲が観察され、同一形状の粒子がまったく異なる合成法の主生成物でもあり得ると考えれば、このことはより一層明らかである。更に、ナノプリズムなどの異方性構造は、金及び銀ナノプリズムが、典型的には、大きな{111}平面を有し、端部からの二次元成長を伴うという点で、面選択結合モデルに特有の課題を提示している。ナノプリズムのための多くの合成法は、PVP又は界面活性剤などの安定化剤の存在下で行われ、更に、上に列挙したナノワイヤ、ナノロッド、及びナノキューブの例と異なり、成長は<111>方向に制限されている。これは、ナノプリズムの合成においてしばしば存在する有機安定化剤が成長するナノプリズムの一般的な安定性を提供し、形状を導く役割をほとんど又はまったく果たしていないかもしれないという可能性が十分にあることを示唆している。]
[0032] 確かに、内部欠陥構造は、結晶成長に影響を与える直接の因子として係わっている。特に、粒子形成の初期段階の間に生ずる双晶などの欠陥は、その欠陥が成長溶媒に露出している方向に選択的な成長を生じさせる。ナノプリズムの場合には、<111>方向における平行な積層欠陥が観察され、これらは成長溶媒と端部で、正確には成長が生ずる部分で接触する。ハロゲン化銀成長モデルもまた、多くの合成方法における粒子成長を説明する方法として復活した。このモデルにおいては、双晶面が凹部溝を形成し、この溝は吸着原子の付着に好ましいサイトである。単一の双晶面は、2次元において直接成長するが、ナノプリズムの最終的なサイズを制限するものではなく、一方で平行な2つの双晶面の存在により、急速に成長する端部はお互いに再生し、六角のナノプレートなどの形状を形成すると予期される。つい最近、Rocha及びZanchetは、J.Phys.Chem.C 2007、111、6989において、銀ナノプリズムにおける欠陥を少し詳しく研究し、内部構造が多くの双晶及び積層欠陥ととても複雑に関係しうることを示した。これらの欠陥はお互いに、かつナノプリズムの{111}平面に並行であり、ラメラに再分割されて<111>方向に積層され、銀シード中にも存在する。その文献において、<111>方向における面欠陥がどのように局所的な六方最密充填(hcp)領域を生ずるかが実証された。これらは、<111>に方向付けられたナノプリズムにおいて観察される2.50Åの格子縞を説明するであろう。この格子縞は、従来は形式的に禁止される1/3{422}反転が原因と考えられていた。]
[0033] 我々は、銀ナノプリズムを高収率で選択的に(>95%)生産する熱合成手順を記載する。予め調製されたサンプルは、銀ナノプリズムのSPRの重要な特徴が見える程度に十分に単分散である。プラズモン減衰の程度の進展における傾向は、UV−Visスペクトルの分析を通して、プラズモン共鳴エネルギー及びナノプリズムのサイズの関数として説明される。TEMデータは、欠陥が銀ナノプリズムの結晶構造に著しい影響を有し、銀ナノプリズムに関する異方性成長メカニズムにおける欠陥の役割を理解するための重要な示唆を有することを明らかにする。]
[0034] 我々は、急速かつ再現可能なやり方で、かつ非常に温和な条件の下で(室温で水を溶媒として)、銀ナノプリズムを選択的に(>95%)生産するシードベースの熱合成手順である、銀ナノプリズム合成のための方法を記載する。この方法は、アスコルビン酸によるAg+の銀シード触媒還元を伴い、驚くべきことに、結果として生産された球状ナノ粒子の濃度が最小限であった。SPRのスペクトル位置は、厚みをまったく有意に変動させること無く、ナノプリズムのサイズを制御することによって調整できる。これは、成長混合物中のシードの数を調節することを通して達成できる。]
[0035] この方法で生産されたナノプリズムの典型的な例を、図1に示す。
高品質のサンプルの生産のための重要な構成要素は、ポリ(ナトリウムスチレンスルホネート)(PSSS)などのポリアニオン系ポリマーであり、シードの生産工程における安定化剤として用いられる。もしポリアニオン系ポリマーが取り除かれるか、又はシードの生産の後にのみシード溶液に添加されたとすると、ナノ粒子の形状及びサイズには多様性が存在することになり、このことは図2に明らかに示されている。この結果は、ポリアニオン系ポリマーが、成長段階の間に一定の結晶面に選択吸着することを通して単に形状を導く役割を果たすわけではなく、むしろシードの欠陥構造に強い影響を有し、つまりナノプリズムに成長しやすい構造のシードに選択性を有するに違いないということを示すので、重要である。我々は、ポリアニオン系ポリマーが銀の表面と比較的強く相互作用し、それ故にシードの欠陥構造に影響を与える可能性があると考えている。] 図1 図2
[0036] 一般的に、多くのサンプルの合成法において存在するクエン酸塩の量は、とても少ない。例えば、100μlのシード溶液を使用する合成においては、成長工程の間に溶液中に118nmolのクエン酸塩が存在し、一方で1500nmolのAg+が添加される。これは、以前に報告した結果と対照的であり、以前の結果では、低いクエン酸塩/Ag+比(<1)は、広い範囲のサイズ(30〜300nm)を有する三角及び六角構造を生じてしまい、ナノプリズムを主生成物とするためには高いクエン酸塩/Ag+比(>1)が必要とされた。これは、クエン酸塩が、ナノプリズムの{111}平面により強く吸着することによって面選択成長をもたらす傾向があるという結果に基づいていた。ここで、UV−Visによるサンプルの分析は、合成において用いられるクエン酸塩の量の増加がナノプリズムの異方性を増加させないことを示している。比較的少量のクエン酸塩の存在下で得られた高品質のナノプリズムは、成長工程におけるクエン酸塩の存在よりも、シードの欠陥構造の方が、ナノプリズムを異方性成長させる基礎となる傾向があることを示している。図2B及び図2Cを参照すると、クエン酸塩の量がシード生産工程において比較的多い場合には、PSSSが存在しない場合でさえ、高度に成形されたナノ粒子がなお得られる。それ故に、クエン酸塩は、シードの欠陥構造に影響を与えることによって、異方性成長に重要な役割を果たしている可能性がある。しかしながら、クエン酸塩がPSSSなどのポリアニオン系ポリマーが存在しない状況で用いられる場合には、様々な異なる形状を有するナノ粒子が生産される。PSSSなどのポリアニオン系ポリマーを用いる利点は、主に三角形状を有するナノ粒子が生産されることである。] 図2B 図2C
[0037] この方法によって生産されたナノプリズムを特徴づけ、ナノ粒子の寸法と主SPRの位置との間の関係を調査するために、4サンプルから統計的に有意な数のナノプリズムのTEM分析を実施した。これらのサンプルの主SPRの位置は、図3Aに見られるように良く分離されていた。サンプルのTEMグリッドは、多くの粒子を積層形態に配列させ、それらの平面を電子ビームと並行にするように調製した。これを達成するために、遠心分離によってナノプリズムを濃縮することが必要であったので、結果としてナノプリズムの端部長さ及び厚みの両方を測定することが出来た。多くのナノプリズムはおそらくTEMグリッドの面に端部を載せているけれども、いくつかのナノプリズムは、ナノプリズムの平面と垂直な<111>軸の周りを自由に回転することが可能であるので、端部長さ測定は、一定程度の不確実性を有している。ナノプリズムの測定データを、図3B及び表2に示す。このデータから、全てのサンプル内でナノ粒子の厚みの分布が存在するが、各々のサンプルからのナノプリズムの平均厚みは、各々のサンプルに関しておよそ同一であることが明らかである。一方、端部長さは明らかな傾向を見せ、各々のサンプルからのナノプリズムは、主SPRのスペクトル位置が増加するにつれ、より長い平均端部長さを有する。] 図3A 図3B
[0038] サンプル1〜4からのナノプリズムのTEM像の例を、図11に示す。図11は、ナノプリズムの三角形状が成長プロセスの初期に確立され、成長はこれらのナノプリズムの増大を通して進行することを実証している。] 図11
[0039] 理論に従うと、バンドの位置は端部長さ及び厚みの逆数に線形に依存するはずである。実際に、Lをナノプリズムの端部長さ、そしてTをナノプリズムの厚みとして、λmaxをL/Tに対してプロットすると、図3Cに見られるように線形関係が見出される。端部長さ(L)を、式1を用いて、厚み(T)及び主SPRのスペクトル位置(λmax)の関数として表すことが可能である。] 図3C
[0040] ]
[0041] ナノプリズムの光学特性を研究するために、端部長さを増加させた一連のサンプルを調製した。これらのサンプルは色の過程を見せ、ナノプリズムの端部長さが増加すると主SPRが次第にレッドシフトする。これらのサンプルを、図4Aに示し、そのスペクトルを図4Bに、そしてエネルギーに対して再プロットしたものを図4Cに示す。スペクトルはサイズの分布を有する液体中のナノプリズムの集団のUV−Vis測定を行うことで得られたので、全てのスペクトルは不均一に広がっている。これは、スペクトルの線幅(FWHM)を測定することによってはプラズモンの散逸時間についての絶対的な情報を得ることが出来ないことを意味する。しかしながら、不均一に広がった線幅が、プラズモン共鳴エネルギー及びナノプリズムの体積の関数としてどのように変化するかを観察することは出来る。] 図4A 図4B 図4C
[0042] 図5Aにおいて、図4CからのSPRの各々の線幅(FWHM)を、プラズモン共鳴エネルギーに対してプロットした。共鳴のエネルギーが増加すると、主SPR(面内双極子)の幅が増加することが見て取れる。これは、Munechikaらによる個々の銀ナノプリズムの散乱スペクトルの測定と一致する。Munechikaらは、個々のナノプリズムのSPRの線幅がプラズモン共鳴エネルギーとともに増加し、また、線幅がナノプリズムの体積とも相互に関連していたことを示した。全体的に見て、この線幅の増加傾向は、増加した放射減衰、及び増加した非放射崩壊の両方を原因として説明可能であろう。] 図4C 図5A
[0043] 図5Bにおいて、SPR線幅をナノプリズムの体積に対してプロットしており、我々のサンプルにおいては、ナノプリズムの体積が増加するにつれてSPRの線幅が減少することが見て取れる(SPRエネルギーはナノプリズムの端部長さに逆比例している)。図1〜5のTEMの研究は、粒子が大きくなっても、サンプルの多分散性は減少しない、すなわち狭いサイズ分布を有するサンプルを生産するための成長条件の絞込みがないことを示している。実際に、表3を参照すると、端部長さの増加により、線幅は減少するけれども、端部長さの分布においては一様な増加が存在する。これは、ナノプリズムの体積が増加するとともに線幅が狭くなることは、サンプルにおいてサイズが増加すると、個々の銀ナノプリズムのSPRの線幅が狭くなることが原因でなければならないことを意味している。] 図1 図2 図3 図4 図5 図5B
[0044] ]
[0045] 放射減衰の程度はナノ粒子の体積とともに増加するので、放射減衰の程度は増加していなければならない。しかしながら、線幅は体積の増加とともに狭くなるので、これは、プラズモン減衰の全体の減少が存在することを示している。それ故に、放射減衰のいかなる増加をもはるかに上回る非放射減衰の減少が存在しなければならない。それ故に、これらのナノプリズムにおける放射減衰の程度は、非常に小さくなければならない。この振る舞いは、狭い範囲の直径を有するが、アスペクト比の範囲が広い金ナノロッドにおいて観察された振る舞いと非常に似ている。一方で、Munechikaらは、彼らの個々の銀ナノプリズムから得られたSPRの線幅が、ナノプリズムの体積とともに増加することを示している。]
[0046] もし面内双極子SPRが十分にレッドシフトし、そしてサンプルが十分に単分散であれば、次に面内4重極子SPRが見られるべきである。図4Aにおける多くのスペクトルは、明らかにこのケースである。計算は、銀ナノプリズムがより一層大きくなると、より高次の多極子共鳴が見られるようになるはずであることを示している。ナノロッドにおけるより高次の多極子共鳴はよく実証されており、銀ナノスフィアにおいても観察される。我々の最も大きいナノプリズムのサンプルに関するいくつかのスペクトルでよく調べると、面内4重極子共鳴の肩が〜465nmに示されている(図12を参照)。これは別の種による吸光が原因である可能性もあるが、我々は暫定的に、これを面内8重極子共鳴として割り当てる。] 図12 図4A
[0047] 光学特性は別として、銀ナノプリズムの構造的な性質は、大きな興味の源である。この実施例におけるこれらのナノプリズムのTEM分析は、欠陥近傍におけるhcp構造だけでなく、結合して約1.5nmの厚みの連続的なhcpラメラ領域を生み出す複数の欠陥をも生ずる、銀原子の欠陥誘起配列の直接的な証拠を提供する。以下に詳細に示すように、この原子の六方配列は、2.50Åの間隔でナノプリズムの{111}平面と垂直に伝播し、これにより、図6に示すような、平らに横たわった銀ナノプリズムにおいて共通して観察される2.50Åの格子縞が説明される。] 図6
[0048] この起こりうる原子のhcp配列を調査するために、我々は、垂直に方向付けられた銀ナノプリズムの詳細なTEM研究を実施した。平らに横たわったナノプリズムの典型的なサンプルを、図1Aに示す。<111>方向における欠陥をTEMで観察するために、{110}面が像の面内になるようにナノプリズムを方向付けることが必要である。この方向付けにおいて、2つの{111}面及び{100}面が電子ビームに対して垂直に配列する。次いで、ナノプリズムの平面から伝播して行く{100}面又は{111}面のいずれかにおける不連続性として、欠陥を検出することが出来る。これを、図7に概略的に説明する。] 図1A 図7
[0049] 正確な方向付けを生ずるために、まず、図1Bに示すような積層形態におけるように、ナノプリズムを垂直に方向付ける必要があり、次に、(図7の左手側に見られるように)電子ビームに並行な一つの端部を有する必要がある。これは、多くのナノプリズムがおそらくTEMグリッド上にそれらの端部の一つを載せているので、正確に整列された{110}面を有するナノプリズムが少ない事を意味する。しかしながら、いくつかのナノプリズムは正しい方向を有し、そして層状の欠陥構造は、図8Aにおける2つの積層された銀ナノプリズムにおいて見られる。結晶の内部欠陥構造を見ることができ(図8B)、右側のナノプリズムの詳細な調査は、欠陥が<110>に沿って実際に観察されることを明らかにしている。この欠陥の分析を図8Cに示す。ナノプリズムの{111}平面が明確に示されており、{111}面に対応する格子縞が、六角形の{111}とラベルされた側と並行にナノプリズムの面から伝播して行くことが見て取れる。これらの縞の間の間隔を測定すると、2.35±0.05Åであり、{111}面に関する正確な間隔であった。更にナノプリズムの面から離れると、これらの{111}面は、ナノプリズムの面と並行な{111}面の間の繰り返される積層欠陥のために、不連続性を示す。また、二つの白線によって示される、ナノプリズムの平面と垂直に伝播する原子の配列が存在する。意義深いことに、原子のこの垂直配列は、2.50±0.05Åの周期を有し、平らに横たわったナノプリズムを<111>に沿って観察した場合に(図6)観察される格子間隔に対応する。] 図1B 図6 図7 図8A 図8B 図8C
[0050] 実際に、ここでナノプリズム中にはとても多くの欠陥が存在し、結晶の有意な連続部分はhcp配列を有し、ラメラ領域は約1.5nmの厚みである。これは、図8Cの上部におけるTEM像上のジグザグパターンの重ねあわせによって強調される。このパターン上の各々の先端を、このhcp格子の交互のA層及びB層(原子面)における原子に割り当てると、この領域におけるA層とB層との間の平均測定距離は2.35Åであり、これはABCABC・・・という構成で積層されているfcc格子における{111}平面の間の間隔である。ABABAB・・・という構成における交互の層の間の間隔は、ABCABC・・・という構成における間隔と同じであるので、それ故に、ジグザグパターン上の各々のA点及びB点は、hcp格子の交互のA層及びB層における原子に対応する。] 図8C
[0051] 銀の格子の復元を、図7に概略的に説明する。一連の固有の積層欠陥(isf)を導入することにより、これらの欠陥がナノプリズムの領域中で原子面のABABAB・・・積層配列をどのように生ずるのかが容易に分かる。ナノプリズムの{111}平面に対して垂直な原子の配列が示され、2.50Åの間隔を有する。] 図7
[0052] 更に、結晶構造のhcpへの変換の証拠は、我々のナノプリズムからのX線回折(XRD)データにより提供される。これらは、予期されるようにfccの銀の格子に関するピークを示すが、Rocha及びZanchetにより示されている、hcp配列から生ずると予期される反射に対応する2つの更なるピークもまた示す。これを、図9に示す。] 図9
[0053] ナノプリズムの有意な部分はそのfcc構造を維持しているので、図8におけるTEM分析及びXRDデータによって証拠付けられているように、我々は、<111>に方向付けられて平らに横たわった銀ナノプリズムにおけるfcc格子縞の観察を排除できない。実際に、このことは、銀ナノプリズムにおける1.44Åの格子縞が{220}反射から生じ、銀ナノプリズムにおける1.24Åの格子縞が{311}反射から生ずるという近年の観察に関する状況により明らかとなった。] 図8
[0054] ナノプリズムのよく知られた三角形状及び一定の厚みは、端部からの高度で選択的な側面成長から生ずる。ナノプリズムのラメラ欠陥構造のために、正確にはこれらの端部で欠陥が成長溶液に露出する。それ故に、ここに記載された結晶構造の有意な再配列は、2次元成長を生ずるのに重要な役割を果たす可能性が非常に高い。端部でのhcp結晶面(又は欠陥が豊富な領域)は、{111}面又は{100}面と比較して、成長の間の銀原子の添加をとても高速に保たなければならない。hcp構造は銀に関しては自然な結晶構造ではないので、それ故に、fcc構造よりも安定でないに違いなく、hcp構造が成長溶媒に露出している端部を{111}面又は{100}面よりも安定でなくしていると思われる。このより高度の不安定性は、端部でのより速い2次元成長の根拠となりうる。hcp及びfcc結晶構造は、ともに六方対称性を有するので、なぜ六角のナノプレートでなく、三角形が2次元成長の選択的な結果であるのかが未だ説明されていない。]
[0055] これを説明するために、図10Aに概略的に示すような、平坦な、<110>に方向付けられた、fcc単結晶を考えてみよう。fcc単結晶がかかる異方性構造を導くことは提案されていないが、相対する側が交互に{111}/{100}の組の面を有するように切り取ることができることは明らかである。fcc結晶は<111>軸の周りに6回対称性を有するので、六角のプレートレットは図10Bにおいて説明される交互の面を有するかもしれないが、端部での各々の面の相対的なサイズは、必ずしも図が示唆するように固定されてはいないであろう。] 図10A 図10B
[0056] 次に、図10Cに示す、シードからの初期の2次元成長の結果であり得る六角のナノプレートのより現実的な型を考えよう。これは、2つのfcc領域の間に挟まれたhcp(又は欠陥が豊富な)領域を有し、我々のTEMデータが示唆しているものに対応する。概略図は、中央のhcp領域のそれぞれの側の領域が非対称となるように描かれている。各々のfcc層の厚みは、次いで、各々の端部上の個々の結晶面の各々のサイズを定めるであろう。これは、ナノプレートのエッジの全てが同一なのではなく、それらの3つが{111}面よりも大きい{100}面を有し、一方でその他の3つは{100}面よりも大きい{111}面を有することを意味するだろう。我々は、より大きく、より安定な{111}面を有する3つの端部が、その他の3つよりもゆっくりと成長することを提案する。これは、ナノプリズムの{111}平面上の成長がないことと一致する。より大きく、より安定でない{100}面を有するその他の3つは、有意に速く成長し、成長の間の初期に三角のナノプリズムの形成を導く。それ故に、hcp層のそれぞれの側のfcc層間の厚みの非対称性は、六方成長とは対照的に三角を定義する。三角形が形成されると、成長は、より小さな{100}面を有する選択的でない端部上で継続し、そのようにして、連続成長に関して、ナノプリズムの各先端で選択的な成長端が拡大する。これらの選択的な端部は常に速く成長するので、ナノプリズムはその三角形状を維持し、両方の種類の端部は調和した形で成長する。このように、より小さな三角のナノプリズムは、厚みを有意に増加させることなく連続的に成長してより大きな三角のナノプリズムとなる。hcp層のそれぞれの側のfcc層間の厚みにおける非対称性が存在しない場合には、六角のナノプレートが予期される。] 図10C
[0057] この点でハロゲン化銀成長モデルを思い出す価値があり、このモデルでは異方性成長はナノ粒子の核における双晶面の存在によって促進される。核の端部では双晶面が成長溶媒に露出し、交互に凸凹の{111}表面が形成され、凹表面上ではとても速い成長が生じ、自分自身が成長して消滅し、双晶形成の時に粒子のサイズによって定まるサイズの三角のナノプリズムを後に残す。2つの双晶面の存在により、より大きな六角のナノプレートの形成を生ずることが出来る。この異方性成長のためのハロゲン化銀モデルは、我々の観察と全体的に一致するわけではない。まず、我々の分析は、いくつかの積層欠陥がナノプリズム中に存在する可能性があり、それらが組み合わさって連続的なhcp領域を生ずる可能性すらあることを示している。次に、我々のナノプリズムは、一度三角形状が定まると、成長を停止しない。図11に見られるように、三角形状は合成の初期に定まり、より大きなナノプリズムを形成することができ、端部で凹表面が成長して消滅したずっと後において、{111}凸表面のみが残る。我々のサンプルにおいてさえ、成長はナノプリズムの厚みをまったく増加させることなく端部で継続し、すなわち、ナノプリズムの{111}平面上では成長しない。] 図11
[0058] hcp及びfcc{100}面上の速い成長は、形状に影響を与える界面活性剤又はポリマーの使用を伴う貴金属のナノロッド及びナノキューブの合成法において通常観察されることに反して行われる。上に述べたように、これらの合成法においては、有機種が{110}及び{100}などのより安定でない結晶面に付着することを好む傾向にあり、{111}面の選択的な成長が導かれる。我々は、我々の合成法においては、潜在的に形状を導く有機種の量は非常に少ないことに気づいている。例えば、PSSSを用いてそれらの合成の間にシードの品質を高めるが、たとえPSSSが完全に存在せず成長がまったく制御されていなくとも、非常に多くの割合の粒子は異方性であり、概してナノプリズム及びナノプレートである。また、上に述べたように、我々の合成法の成長工程において用いられるクエン酸塩の量は非常に少ない。それ故に、強い配位種が存在しないときに、より低い安定性の{100}面が{111}面よりも早く成長することがもっともらしく思われる。]
[0059] 我々は、簡便で、非光化学的な、銀ナノプリズムの合成のための室温手順を考案した。予め調製した銀ナノプリズムは十分に単分散であるので、UV−Vis測定からの不均一に広がったSPRの線幅を測定することを通じて、プラズモン減衰の程度及び性質における傾向を調査することが出来た。我々は、プラズモン共鳴エネルギーの減少とともにプラズモン減衰が減少することを見出し、これはその他の研究者達による観察に一致する。しかしながら、プラズモン減衰の減少はまた、ナノプリズムのサイズの増大とも関連する。放射減衰はナノ粒子の体積に比例するので、観察された減衰全体の減少は、放射減衰及び放射減衰を増加させる全て存在の量が少なく、プラズモン共鳴エネルギーの減少に伴う非放射減衰の減少が勝っていることを暗示している。これらの結果は、少なくとも低いプラズモン共鳴エネルギーでは、プラズモンの減衰は非常に小さく、そして薄い(〜5から6nmの厚み)銀ナノプリズムが、局所電場の増幅に依存した用途のために理想的には適していることを示している。これは、均一線幅の個々のナノプリズムを測定することにより確かめる必要がある。]
[0060] 我々は、銀ナノプリズムが、ナノプリズムの平面と垂直な<111>方向に多くの欠陥を持ち、これらが組み合わさって2つのfcc層の間に挟まれたhcp層を生ずる可能性があることを示した。このhcp層は、2.50Åの周期を有しており、平らに横たわったナノプリズムにおいて共通して観察される2.50Åの格子縞のための説明を提供する。更に、この2次元hcp層は、端部での結晶面の非対称な分布によって駆動される三角形のナノプリズムを伴う2次元の側面成長のための最も可能性のある主だった説明であり、ここで非対称な分布はhcp層のそれぞれの側のfcc層の非対称な厚みによって決定される。ハロゲン化銀モデルは、欠陥を重要なものとして同定するので、おそらくは異方性成長を理解するための良い出発点であろうが、金属ナノプリズムの成長パターンを適切に説明していないように見える。我々は、ここで報告したような、連続的なhcp領域内での銀原子の欠陥誘起配列は、異方性金属ナノ粒子の成長メカニズムの重要な識見を表すと考えている。]
[0061] 本発明を、以下に与える非限定的な実施例により更に説明する。
実施例1−銀シードの調製
典型的な実験において、2.5mMのクエン酸三ナトリウム水溶液5ml、500mg.L−1の1000kDaポリ(ナトリウムスチレンスルホネート)(PSSS)0.25ml、及び新たに溶解した10mMのNaBH4水溶液0.3mlを混合し、次いで継続して撹拌しながら、0.5mMのAgNO3水溶液5mlを2ml.min−1で添加することによりシードを生産する。該プロセスにおいて、及び全ての溶液のために蒸留水を用いる。]
[0062] 実施例2−銀シードの成長
蒸留水5ml、10mMのアスコルビン酸水溶液75μl、及び様々な量のシード溶液を混合し、次いで0.5mMのAgNO3水溶液3mlを1ml.min−1の速度で添加することによってナノプリズムを生産する。合成の後、25mMのクエン酸三ナトリウム0.5mlを添加して粒子を安定化させ、このサンプルを水で所望の通り希釈する。AgNO3の添加のために必要とされる3分間の後、合成は完了し、その時間の間、ナノプリズムの成長に応じてプラズモンバンドがレッドシフトするにつれ、溶液の色が変化する。該プロセスにおいて、及び全ての溶液のために蒸留水を用いる。吸収スペクトルをUV/可視/NIR分光器で記録し、さらに、バンドの最大吸収長さ(λmax、nm)、及びバンドの最大半値幅(FHWM、nm)を記録した。]
[0063] 実施例3−X線回折分析のためのサンプルの調製
遠心分離によりナノプリズムサンプルを濃縮することによって、X線回折(XRD)測定のためにサンプルを調製した。濃縮されたナノプリズム溶液を数滴、5%w/vポリ(ビニルアルコール)(PVA)水溶液数滴に添加することによって粘性のあるナノプリズム混合物を調製した。これを、XRD回折(Philips X’Pert Pro)のためのスライドグラスに添加し、乾燥させた。]
[0064] 実施例4−ポリアニオン系ポリマー
実施例1及び2において上に概説したものと同じ方法論を用いて、我々は、以下のポリアニオン系ポリマーを用いて銀ナノプリズムも作成した。500mg/lのポリマー0.25mlを用いて、実施例1におけるようにシードを調製した。シード溶液100μlを、成長工程のために用いた(実施例2)。]
[0065] ]
[0066] 表中の全てのポリマーは、良い品質のゾルを生産する点で効果的である。調製したサンプルを、主吸着バンドのλmax及びFWHMによって特徴付けた。ゾルの品質を、バンドのλmaxの位置及び狭さ(小さいFWHM)の再現性によって特徴付けた。これらの基準を用いて、表からのポリマーは、好ましい順に、PSAS、PSS−コ−MA、PSA、PSSS、PPVS、PSVSである。]
実施例

[0067] 本発明は、上述の実施態様に限定されるものではなく、細部にわたり変更しても良い。]
权利要求:

請求項1
水溶性のポリアニオン系ポリマーの存在下で銀シードを調製する工程;及び該銀シードを成長させてナノ粒子を形成する工程を含む、ナノ粒子を生産するための方法。
請求項2
該ポリマーは、スルホン化されたポリマーである、請求項1に記載の方法。
請求項3
該ポリマーは、ポリ(スチレンスルホネート)の誘導体である、請求項2に記載の方法。
請求項4
該誘導体は、ポリ(スチレンスルホネート)の無機塩である、請求項3に記載の方法。
請求項5
該誘導体は、ポリ(スチレンスルホネート)の1価の塩である、請求項3又は4に記載の方法。
請求項6
該ポリマーは、ポリ(ナトリウムスチレンスルホネート)(PSSS)である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
請求項7
該PSSSは、約3kDa〜約1000kDaの間の分子量を有する、請求項6に記載の方法。
請求項8
該PSSSは、約1000kDaの分子量を有する、請求項6又は7に記載の方法。
請求項9
該ポリマーは、置換されたスチレンスルホネートのコポリマーである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
請求項10
該コポリマーは、ポリ(ナトリウムスチレンスルホネート−コ−マレイン酸)である、請求項9に記載の方法。
請求項11
該コポリマーは、ポリ(スチレンスルホネート−コ−マレイン酸)である、請求項9に記載の方法。
請求項12
該ポリマーは、アネトールスルホネートの誘導体である、請求項1又は2に記載の方法。
請求項13
該ポリマーは、ポリ(ナトリウムアネトールスルホネート)である、請求項12に記載の方法。
請求項14
該ポリマーは、ポリ(ビニルスルフェート)の誘導体である、請求項1に記載の方法。
請求項15
該ポリマーは、ポリ(カリウムビニルスルフェート)である、請求項14に記載の方法。
請求項16
該ポリマーは、ポリ(ビニルスルホネート)の誘導体である、請求項1又は2に記載の方法。
請求項17
該ポリマーは、ポリ(ナトリウムビニルスルホネート)である、請求項16に記載の方法。
請求項18
該ポリアニオン系ポリマーは、カルボキシル化されたポリマーである、請求項1に記載の方法。
請求項19
該ポリマーは、ポリ(ナトリウムアクリレート)である、請求項18に記載の方法。
請求項20
該銀シードの調製における該ポリマーの濃度は、約0.2mg/l〜約2g/lの間である、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
請求項21
該銀シードの調製における該ポリマーの濃度は、約12.5mg/lである、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
請求項22
該銀シードを調製する工程を室温で行う、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
請求項23
該銀シードを成長させる工程を室温で行う、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
請求項24
形成されるナノ粒子の約95%は、ナノプリズムである、請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
請求項25
本明細書中に実質的に記載された方法。
請求項26
請求項1〜25のいずれかに記載の方法によって生産された銀ナノプリズム。
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引用文献:
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申请号 | 申请日 | 专利标题
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